外の世界

 

初めて路上で声を掛けたのは5年ほど前になる。何の経験もないままアラフォーで突然ナンパを始めたものの、本当にこんな馬鹿げたことが成功するのかと半信半疑のまま、碌に声も掛けられず梅田の街を徘徊していたのが遠い昔のように感じる。その後コロナによる中断や、個人的事情による1年以上の中断、そして東京への移籍を経て、ようやくストリートナンパで100即できたので今思うことを書いてみようと思う。

 

そもそも始めた時はこんなにもナンパを続けるとは思ってもみなかった。なんせ最初の難易度があまりにも高すぎたから、すぐに辞めると自分でも思っていた。実際、初めて声を掛けてから初即(準々即)まで途中ネトに逃げたこともあって半年以上かかったし、その後も地蔵や連れ出し、当日即など次々に降りかかってくるナンパの壁に一々ぶつかっていたから「ナンパってどんだけ難しいんじゃクソが」と日々嘆いては女々しいつぶやきを投げつけていた。

 

でも何だかんだ今日まで続けてきたのは、幸運なことに自分はナンパにおける小さな成功を積み重ね続けることができたからなんだと思う。ずっと界隈を見ていると感覚がおかしくなるけど、そこらのおっさんが何の繋がりのない20代の女を出会った当日に抱いてしまうというのは普通の感覚では妄想じみたファンタジーでしかないわけで、初めからそれが出来なかったからといって嘆く必要はないし、バンゲできただけでも、ちょっと平行トークできただけでも最初のうちは喜びを噛みしめるべきだ。

これさえ読めばすぐに即れるようになる教材もないし、万人が凄腕になれる講習も存在しない。すべては継続による積み上げなのだ。スタートが致命的に遅くて時間はかかったけど、今は昔読んで憧れたナンパブログの世界に少し近づけたような気がしている。

 

しかし本当はサウナ行って家でネトフリでも見て寝ていたいのが正直な本音。40代も半ばになると老眼は始まってるし、体調の良い日の方が少ないし、顔はたるむし、そもそも性欲がほとんどないから承認欲求と意地だけで続けているようなもので、ナンパとしては誠に不健全極まりない。

 

ただ100即して良かったかと問われれば間違いなく良かったと言える。ナンパを始める前は女への執着というか怨念というか、湿度の高い思考が脳みそに詰まっていたけど、今となってはそれが完全に晴れた気分。街に出て頑張れば若い女を抱けて、時にはそれなりに可愛い子に好意を寄せられるということは、陳腐な表現になるけど男としての自信になっている。一方で女に対する変な期待やSEXに関する欲情もきれいさっぱり無くなってしまって、今はむしろ面倒くさい(笑)。順番は間違えてしまったが、やり残した宿題をようやく終えられたような気分。おかげでアプリに張り付いてる気持ち悪いおじさんや“オレの意見だけが正しい”老害にならずに済みそうだし、何より自分にとって本当に大切な人達のありがたみがよく分るようになった。

 

それに若い頃から安全地帯の中からのヒットアンドアウェイで人生を斜めから俯瞰していた(誤魔化していた)自分としては、女にモテるどうこうより、「やればできる」「しんどくても逃げずに続けられる」という自分への信頼みたいなものが得たものとしては一番大きい。これってナンパ辞めた後の人生でも重要なことではないでしょうか。しらんけど。

 

あと年齢の上下問わず“ちゃんとナンパしている人達”から一定のリスペクトをもって接してもらえるようになったのはシンプルに嬉しい。現場に出ている人ってすぐに相手が本物か偽物か見抜けるから、結局は男に認めてもらえる方が嬉しかったりするし、女の子のことよりも地蔵トークしたり、コンビしたり、遠征して朝まで這いずり回ったナンパ仲間の方が鮮明に記憶に残っている。今は多くの友人ができては朝露のように消えていくこの世界が愛おしい。

 

 

ただ自分にとってナンパのイメージはどこまでいってもソロでの声掛けになる。一人で声を掛ける時の、ナンパ以外の思考や雑念が削ぎ落とされて、ただ世界と生身の自分だけが対峙しているような、あの何物にも代えられない感覚がどうしようもなく好きだ。繰り返される拒絶と絶望の先にある(ないかもしれない)わずかな希望を求めて深夜の街を歩き続ける中、ふと立ち止まって空を見上げる時、今までに体感したことがない強烈な“生”を感じることができる。

 

街に出て脳みその奥底から湧き上がってくる恐怖に抗い、通りすがりの他人と繋がり重なろうと声をかける。自分を鼓舞しながら、あるいは壊しながら続けるうち、いつしか負の感情は溢れ出したアドレナリンで偽りの興奮に代わる。頭の中にはどこかで聞いたビートが鳴り響き、まるで自分が物語の主人公のような錯覚を纏って街を疾走する。

疲労で強ばった顔と足をほぐしながら、

悪態をつきながら、

それでも精一杯の笑顔で、

あと一人、あと一人と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナンパという行為それ自体にさしたる意味は無い。

 

 

 

 

 

 

 

ただ今まで知らなかった人や自分に会えたりする刺激的な趣味ではあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続けてると外の世界が昔とは違って見えたりするかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

今でも朝までやってボズったら死ぬ程悔しいって感じるから、家に帰るその時までは続けようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

次は合宿?(白目